「最近抜け毛が増えた」「生え際が後退してきた気がする」と感じてAGA専門クリニックの門を叩き自分は間違いなくAGA(男性型脱毛症)だと覚悟を決めていたのに医師から告げられた診断名が全く別のものであった時の衝撃は計り知れません。しかしそれは同時に「治るかもしれない」という大きな安堵をもたらす瞬間でもあります。AGAは進行性の疾患であり一度発症すれば完治することはなく一生薬を飲み続けなければならないという重い十字架を背負うことになりますがAGA以外の脱毛症の多くは原因を取り除けば完治し元のフサフサな髪に戻れる可能性が高いからです。例えば「円形脱毛症」であれば自己免疫疾患の一種でありステロイド治療などで改善しますし「粃糠性脱毛症」であれば頭皮のフケや炎症を治すことで抜け毛は止まります。また過度なダイエットやストレスによる「休止期脱毛症」であれば生活習慣を見直すだけで劇的に回復することもあります。さらに甲状腺機能低下症などの内科的疾患の症状として脱毛が現れている場合もありその場合は原疾患の治療が最優先となります。このように「ハゲ=AGA」という単純な図式は成り立たず自己判断でAGA治療薬を個人輸入して飲んでいても全く効果が出ないばかりか本当の病気を見過ごしてしまうリスクさえあります。もしあなたが「自分はAGAだ」と思い込んでいても一度立ち止まって専門医の診断を受けることを強くお勧めします。「AGAじゃなかった」という診断は決して無駄足ではなく不必要な治療費と副作用のリスクからあなたを解放し正しい解決策へと導いてくれる希望の言葉になるかもしれないのです。自分の髪の運命を決めるのはネットの情報ではなく医学的なエビデンスに基づいた正確な診断なのです。最後に触れておかなければならないのが客観的に見て全く薄毛ではないのに本人が「自分はハゲている」「このままでは終わりだ」と極度に思い込んで苦しんでいるケースでありこれは「身体醜形障害(BDD)」という心の病気の可能性があります。医師がマイクロスコープで見て「フサフサですよ」「正常な範囲です」と説明しても「先生は嘘をついている」「慰めてくれているだけだ」と信じず次々とクリニックを回るドクターショッピングを繰り返してしまいます。彼らにとって鏡に映る自分の姿は歪んで見えており一本の抜け毛が絶望的な恐怖の対象となります。この場合必要なのはAGA治療薬ではなく心療内科や精神科によるカウンセリングや薬物療法(SSRIなど)です。美容外科やAGAクリニックではこうした患者に対して安易に治療を勧めることは倫理的に問題があるとされており治療を断られることもあります。もしあなたが「誰も分かってくれない」「一日中髪のことばかり考えて仕事も手につかない」という状態であればそれは髪の問題ではなく心の問題かもしれません。その苦しみは本物ですが解決のアプローチが異なります。心のレンズの歪みを治すことで「自分はハゲていなかったんだ」と気づき平穏な日常を取り戻すことができるかもしれません。
薄毛の原因がAGAではなかった時の衝撃と安堵