近年急速に普及したAGAのオンライン診療は自宅にいながら薬が届くという圧倒的な利便性がある一方で対面診療ではあり得ない見落としが起きるリスクを孕んでいることを多くの患者は知りません。私はかつて忙しさを理由にオンライン専門のクリニックを利用したことがありますがその際に経験したことはまさに画面越しの診断の限界を痛感させるものでした。スマートフォンやパソコンのカメラ性能がどれほど向上しても室内の照明環境や角度によって頭皮の色味や毛穴の状態は全く違って見えてしまうのです。私が実際に直面したのは頭皮に起きていた脂漏性皮膚炎の赤みを医師が画面越しに確認できず単なるAGAの進行として処理されてしまったことでした。もし対面であればマイクロスコープを使って毛穴の詰まりや炎症の程度を詳細に観察しAGA治療薬の処方よりも先に皮膚科的な治療を優先すべきだと判断できたはずですがオンラインでは「少し赤みがありますが問題ないでしょう」と片付けられてしまったのです。その結果ミノキシジルの外用薬を使用することで炎症が悪化し抜け毛が減るどころか頭皮のかゆみと痛みが増してさらに髪が抜けるという本末転倒な事態に陥りました。これは決して稀なケースではなくオンライン診療のマニュアル化された問診と視診だけでは複雑な頭皮トラブルや他の脱毛症との併発を見抜くことが極めて困難であることを示しています。また触診ができないという点も決定的なデメリットであり頭皮の硬さや熱感あるいは皮脂の分泌量といった触覚情報は医師が治療方針を決定する上で非常に重要な要素ですがこれらが全て欠落した状態で薬が出されることには恐怖すら感じるべきです。結局のところAGA治療は長期戦であり一度処方された薬を飲み続けるだけでなくその時々の頭皮環境に合わせて微調整を行うことが成功の鍵ですがオンライン診療ではその「微調整」に必要な情報量が圧倒的に不足しているため結果として治療の質が低下し効果実感までに無駄な時間を費やしてしまう可能性が高いのです。
画面越しでは伝わらない頭皮の微細な炎症と誤診のリスク