薄毛の原因は必ずしもAGA(男性型脱毛症)だけとは限らず円形脱毛症や甲状腺疾患による脱毛あるいは膠原病や梅毒といった全身疾患の症状の一つとして脱毛が現れることがありますがオンライン診療の問診と画面越しの視診だけではこれらの鑑別診断を行うことは極めて困難です。私が知るある事例では頭頂部の薄毛を気にしてオンライン診療を受けた男性がAGAと診断されてフィナステリドを処方されましたが半年経っても効果がなくむしろ脱毛斑が広がっていったため不審に思って皮膚科を受診したところ実は「多発性円形脱毛症」であったことが判明しました。円形脱毛症は自己免疫疾患でありAGAとは治療法が全く異なるためAGA治療薬を飲んでいても効果がないどころか適切なステロイド治療などの開始が遅れることで難治化してしまう恐れがあります。また頭皮に湿疹やかさぶたがある場合それは単なる肌荒れではなく接触性皮膚炎や頭部白癬(水虫菌による感染)である可能性もありますが画面越しではその質感や真菌の有無を確認する検査ができないためステロイド外用薬を誤って処方されれば白癬菌が増殖して症状が劇的に悪化することさえあります。医師は神様ではないため情報が限られた中では確率論で診断せざるを得ず「成人男性の薄毛=9割がAGA」という前提で診療を進める傾向がありますが残りの1割のイレギュラーなケースに該当した場合オンライン診療の限界が患者の健康を害する凶器となります。対面診療であればダーモスコピー検査や必要に応じて血液検査や皮膚生検を行うことでこれらの疾患を除外し確定診断を下すことができますがそのプロセスを省略するオンライン診療は言わば「見切り発車」の治療でありそのリスクを背負うのは他ならぬ患者自身であることを忘れてはいけません。多くのオンラインAGAクリニックが掲げる「即日処方」「診察時間5分」というキャッチコピーは忙しい現代人にとって魅力的ですが医療の本質的な観点から見れば丁寧な問診と診断プロセスが省略されていることの裏返しでもあります。本来医療行為とは患者の既往歴や生活習慣そして家族歴などを詳細に聴取し現在の身体状況を総合的に判断した上で行われるべきものですが回転率を重視するオンライン診療のビジネスモデルでは一人ひとりの患者に時間をかけることが構造的に難しくなっています。
他の皮膚疾患との鑑別が難しく症状を悪化させる可能性