AGAと間違われやすくまたAGAと併発しやすい脱毛症の一つに「脂漏性脱毛症」があります。これは過剰に分泌された皮脂が酸化したり頭皮の常在菌であるマラセチア菌が増殖したりすることで脂漏性皮膚炎という炎症を引き起こしその炎症が毛根にダメージを与えて抜け毛を誘発するものです。AGAも皮脂分泌が増える傾向があるため見分けにくいのですが脂漏性脱毛症の特徴は頭皮の「赤み」「痒み」「ベタつき」そして「湿ったフケ」です。AGAには痒みや痛みはありませんが脂漏性脱毛症では頭皮が炎症を起こしているため不快感を伴うことが多いです。またフケが毛穴を塞ぐことで「粃糠性脱毛症」を併発することもあります。この場合優先すべきはAGA治療薬の使用ではなく抗真菌薬(ケトコナゾールなど)やステロイド外用薬による炎症の鎮静化です。炎症がある頭皮に育毛剤(特にミノキシジル)を使用すると刺激でさらに炎症が悪化し逆効果になることがあるため注意が必要です。脂漏性皮膚炎は慢性化しやすく再発を繰り返す厄介な病気ですが適切なスキンケアと食生活(脂質や糖質の制限、ビタミンB群の摂取)でコントロール可能です。頭皮が赤くて痒いのに「これは好転反応だ」などと勘違いしてAGA治療を続けていると頭皮環境が崩壊してしまいます。まずは皮膚科専門医に頭皮の状態を診てもらい炎症を治してから育毛に取り組むのが正しい順序です。フィナステリドやミノキシジルといったAGA治療薬を半年以上真面目に使い続けているのに全く効果が出ないあるいは抜け毛が減らないという場合「薬が効かない体質」なのではなくそもそも「診断が間違っていた」可能性を疑うべきです。前述した円形脱毛症や休止期脱毛症、内科的疾患以外にも「薬剤性脱毛症」というものがあります。これは抗がん剤だけでなく抗うつ薬、高血圧の薬、高脂血症の薬などの副作用として脱毛が起きているケースです。また「抜毛症(トリコチロマニア)」という自分で無意識に髪を抜いてしまう精神疾患の可能性もあります。本人は抜いている自覚がない場合もあり診断が難しいケースの一つです。さらに稀ですが「瘢痕性脱毛症」といって毛根が炎症で破壊され傷跡(瘢痕)になってしまう病気もあります。この場合毛根が消失しているためどんな薬を使っても髪は生えてきません。また単純に「加齢による老人性脱毛症」である場合もあります。これはヘアサイクル全体の活力が低下して起こる自然現象でありAGAのような特定部位の脱毛ではなく全体的に薄くなります。薬が効かないと感じたら漫然と継続したり薬の量を勝手に増やしたりするのではなくセカンドオピニオンを求めて別の医師の診断を仰ぐことが大切です。マイクロスコープで毛根の状態を詳細に見たり血液検査を行ったりすることでAGA以外の隠れた原因が見つかるかもしれません。正しい診断こそが正しい治療のスタートラインなのです。