抜け毛や薄毛は単なる頭皮の問題や老化現象ではなく体の内部で起きている深刻な病気のサインである場合があり特に注意が必要なのが甲状腺疾患や貧血などの全身性疾患です。甲状腺ホルモンは全身の代謝を司るホルモンであり髪の成長にも深く関わっています。甲状腺機能低下症(橋本病など)になると代謝が落ちて髪が乾燥しパサパサになり抜け毛が増えるだけでなく眉毛の外側が薄くなるという特徴的な症状が現れることがあります。逆に甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)でも代謝が過剰になりすぎて抜け毛が増えることがあります。また鉄欠乏性貧血も脱毛の大きな原因です。髪の毛を作る毛母細胞は細胞分裂のために多くの酸素と栄養を必要としますが貧血になると血液中の酸素運搬能力が低下し毛根が酸欠状態になります。特に女性に多いですが男性でも偏食や消化器系の疾患により貧血になりそれが原因で薄毛になるケースは珍しくありません。亜鉛欠乏症も同様に髪の合成障害を引き起こします。これらの疾患による脱毛はAGA治療薬を飲んでも治りません。むしろ原因疾患を放置することで命に関わる事態になる可能性もあります。もし抜け毛以外にも「疲れやすい」「寒がりになった」「動悸がする」「爪が割れやすい」といった全身症状がある場合は内科を受診し血液検査を受けるべきです。AGAだと思っていたら実は内臓の病気だったというケースは決して少なくないため「たかが抜け毛」と侮らず体の声に耳を傾けることが重要です。インターネットの普及により誰でも簡単にAGAの情報を得られるようになり個人輸入で薬を手に入れることも容易になりましたがそれに伴って自己判断による誤った治療トラブルが急増しています。「生え際が後退したからAGAに違いない」と思い込んで薬を飲み始めたものの実は牽引性脱毛症(髪を強く結ぶことによる脱毛)だったり単なる生まれつきの額の広さだったりするケースもあります。また「つむじが薄い」と悩んで来院した患者が実はただのつむじ割れ(寝癖や生え癖)であったという笑い話のような事例も実際にあります。素人が鏡で見る情報には限界があり主観的な思い込みが入り込む余地があります。そこで重要になるのがプロによるマイクロスコープ診断です。マイクロスコープを使えば頭皮の毛穴の状態、毛の太さのばらつき、密度の変化、炎症の有無などを客観的に観察することができます。AGA特有の「軟毛化(ミニチュア化)」が起きているのかそれとも毛根自体が消失しているのかあるいは毛根は元気だが休止期に入っているだけなのかといったミクロの情報を得ることで確定診断が可能になります。AGA治療は保険がきかない自由診療であり薬代も安くはありません。AGAじゃなかったのにAGAの薬を飲み続けることはお金をドブに捨てるだけでなく副作用のリスクを無意味に負うことになります。自分の体と未来の髪を守るためにも自己判断というギャンブルは避け一度は専門機関で科学的な診断を受けることを強く推奨します。
甲状腺疾患や貧血が隠れている脱毛のサイン