医療における信頼関係の構築は対話の質に大きく依存していますがオンライン診療では通信環境という技術的な障壁がその対話を阻害し結果として納得のいく治療が受けられないというデメリットが生じます。私が取材したある患者の体験談によれば彼は地方在住で都市部の有名なAGAクリニックのオンライン診療を受けた際に自宅のWi-Fi環境が不安定だったために医師の声が途切れ途切れになり重要な説明を聞き逃してしまったといいます。通常であれば聞き直せば済む話ですが画面越しの微妙なタイムラグや医師の早口な説明に対して「もう一度お願いします」と言い出しにくい雰囲気が生まれ分からないまま頷いてしまった結果薬の用法用量を誤って認識し効果が出ないまま数ヶ月を過ごしてしまいました。また画面越しでは視線が合いにくく医師が手元のカルテを見ているのか画面を見ているのかも判別しづらいため「本当に自分の悩みに向き合ってくれているのか」という疑念を抱きやすくこれが治療へのモチベーション低下に直結します。対面診療であれば医師の熱量やスタッフの対応の丁寧さを肌で感じることができそれが「この先生に任せよう」という安心感に繋がりますがデジタルな通信のみではその温かみが伝わらず事務的な処理をされたという印象だけが残ることが多々あります。さらに深刻なのはデリケートな悩みである薄毛について相談する際に通信トラブルで映像が固まったり音声がハウリングしたりすると羞恥心が刺激され相談そのものを早く終わらせたいという心理が働いてしまうことです。本来ならば生活習慣の改善や食事のアドバイスなども含めて包括的な治療を受けるべきところを通信の不便さが心理的なバリアとなり「薬だけ貰えればいい」という安易な妥協へと患者を誘導してしまいます。このようにオンライン診療は物理的な距離を縮めるツールであるはずが皮肉にも医師と患者の心理的な距離を遠ざけ質の高い医療コミュニケーションを成立させることを困難にしている側面があるのです。