私の髪の悩みは、30代後半から始まりました。AGA治療薬であるフィナステリドを服用し、抜け毛の進行は、確かに食い止められました。しかし、一度、後退してしまった生え際のM字部分が、そこから劇的に回復することはなく、私の心の中には、常に、ある種の「停滞感」と「物足りなさ」が、くすぶり続けていました。もっと、積極的な治療はないのだろうか。そんな時、インターネットで知ったのが、「髪育注射」でした。正直、最初は、半信半疑でした。「頭に注射をするなんて、痛そうだし、本当に効果があるのか?」。しかし、ウェブサイトに掲載されている、数多くの症例写真(ビフォーアフター)は、私の心を、強く揺さぶりました。そこには、私と同じように、生え際の後退に悩んでいたであろう男性たちが、数ヶ月後には、明らかに髪の密度を取り戻し、自信に満ちた表情を浮かべている姿が、映し出されていたのです。私が、最終的に髪育注射を受ける決断をした、決め手は、三つありました。一つは、その「即効性への期待」です。薬のように、何年もかけて、じわじわと効果を待つのではなく、より短期間で、目に見える変化が欲しい、と強く感じていました。二つ目は、「副作用への安心感」です。私が選んだPRP療法は、自分自身の血液を使うため、薬物療法で懸念されるような、男性機能への影響や、肝臓への負担といった、全身性の副作用の心配が、ほとんどない、という点に、大きな魅力を感じました。そして、三つ目は、「最後の砦」という、覚悟でした。もし、これでダメなら、もう諦めがつく。そう思えるくらい、当時の私は、自分の見た目に対して、深刻なコンプレックスを抱いていたのです。カウンセリングで、医師から、治療のメカニズムと、リスクについて、丁寧な説明を受け、私の決意は固まりました。それは、長年の悩みとの、決着をつけるための、大きな一歩でした。