三十歳を目前にして、僕は自分の髪に明らかな異変を感じていました。シャワーを浴びれば排水溝はすぐに真っ黒になり、朝起きれば枕には細く短い抜け毛が散らばっている。頭皮は常に脂っぽく、夕方には髪がぺたんと潰れてしまう。当時の僕の食生活は、今思えば最悪の一言でした。朝は菓子パン、昼はカップラーメンか牛丼、夜はコンビニ弁当とビール。野菜なんて、カップ麺のかやくくらいしか口にしていませんでした。そんな生活を続けていたある日、鏡に映る自分の頭頂部の透け具合に愕然とし、ようやく僕は変わる決意をしたのです。まず僕が始めたのは、ジャンクフードとコンビニ弁当を一切やめ、自炊に切り替えることでした。知識もなかったので、とりあえず「和食は体に良いだろう」という安直な考えから、ご飯、味噌汁、そして焼き魚か納豆、というシンプルな食事を続けました。ご飯は玄米に変え、味噌汁にはワカメや豆腐をたっぷり入れました。すると、一ヶ月も経たないうちに、体に変化が現れ始めました。まず、あれほど酷かった頭皮のべたつきが、明らかに改善されたのです。夕方になっても髪がふんわりとしていて、スタイリングが崩れにくくなりました。そして三ヶ月が経つ頃には、シャワーの時の抜け毛が減っていることに気づきました。特に、以前は目立っていた細く短い毛が減り、抜ける毛が比較的しっかりとした太さを持つようになってきたのです。もちろん、食事を変えただけで失われた髪が元に戻るわけではありません。しかし、髪が育つための土台が、確実に健康な状態へと変わっていくのを実感しました。この体験は、僕が本格的なAGA治療へと踏み出す、大きな自信ときっかけを与えてくれたのです。