AGA治療を開始した多くの人が経験する「初期脱毛」。髪を増やすために始めた治療で、逆に抜け毛がひどくなるというこの現象は、精神的に非常に辛いものです。排水溝に溜まる髪の量、枕に散らばる抜け毛を見るたびに、「治療は失敗だったのではないか」「このまま全部抜けてしまうのではないか」と、不安に苛まれるのも無理はありません。しかし、このひどい初期脱毛こそ、治療が順調に進んでいる何よりの証拠なのです。そのメカニズムを理解すれば、今の不安は未来への希望に変わるはずです。私たちの髪には、「成長期」「退行期」「休止期」というヘアサイクルがあります。AGAを発症すると、このヘアサイクルが乱れ、髪が太く長く成長する「成長期」が短くなります。その結果、多くの髪が十分に育たないまま「休止期」といういわば“抜け落ちる準備段階”に入ってしまいます。AGA治療薬、特にミノキシジルなどは、この乱れたヘアサイクルを正常な状態へとリセットする働きを持っています。薬の作用によって、休止期にあった弱々しい毛根が刺激され、新たな力強い髪(成長期の毛)を作り出す活動を再開するのです。すると、新しく生えてきた元気な髪の毛が、古い休止期の髪の毛を毛穴の奥から押し出す形になります。これが、初期脱毛の正体です。つまり、抜け落ちているのは、いずれ近いうちに抜ける運命にあった弱々しい髪であり、その下では、未来のあなたの髪となる力強い毛が育ち始めているのです。初期脱毛が「ひどい」と感じられるのは、乱れたサイクルのせいで頭皮に溜まっていた休止期の毛が一斉に押し出されるためです。辛い時期ではありますが、これは髪の毛のいわば“世代交代”。古いものが去らなければ、新しいものは生まれません。ひどい抜け毛は、あなたの毛根が再び活力を取り戻したことの証明なのです。