40歳を過ぎた頃には、僕の頭は誰が見ても「薄い」とわかる状態でした。生え際は大きく後退し、頭頂部の髪は見る影もなく、M字部分と頭頂部が繋がりかけている、いわゆるU字型の典型的なAGAです。若い頃から進行はしていましたが、「遺伝だから仕方ない」と半ば諦め、市販の育毛剤を気休めに使う程度でした。友人からは「いっそ剃ったら楽になるぞ」と冗談めかして言われ、自分でもその方が良いのではないかと本気で考えたこともあります。鏡を見るたびにため息をつき、「俺の髪はもう手遅れだ」と完全に心を閉ざしていました。そんな僕が変わるきっかけになったのは、娘の一言でした。「パパ、どうしていつも帽子かぶってるの?」。小学校の授業参観の日、他の父親と自分を見比べて、娘が純粋な疑問を口にしたのです。その言葉が、僕の胸に深く突き刺さりました。娘に、自信のない父親の姿を見せ続けていいのか。このまま、何もしないで老いていくのか。その夜、僕は初めて本気でAGA治療について調べ、震える手で専門クリニックのカウンセリングを予約しました。医師はマイクロスコープで僕の頭皮を見せながら言いました。「確かに進行していますが、まだ産毛がたくさん残っています。毛根は生きていますよ。手遅れじゃありません」。その言葉に、僕は涙が出そうになるのを必死でこらえました。そこから僕の治療が始まりました。内服薬を毎日欠かさず飲み、生活習慣も改めました。最初の数ヶ月は目に見える変化はありませんでしたが、半年が過ぎた頃、明らかに抜け毛が減り、頭頂部に短い毛が生えてきていることに気づきました。一年後、あれほどスカスカだった頭頂部は黒々とした髪で覆われ、後退していた生え際にも力が戻っていました。もちろん、20代の頃のようにはいきません。それでも、僕は失いかけていた自信と、何より娘の前で堂々としていられる自分を取り戻すことができたのです。手遅れだと決めるのは、自分自身。諦める前に、ほんの少しの勇気を出す価値は絶対にあります。
「もうダメだ」と諦めかけた僕が髪を取り戻すまで