AGAは、風邪のように自然に治ったり、現状のまま留まったりすることはありません。それは、明確なメカニズムに基づいて、絶えず進行し続ける「進行性の脱毛症」です。そして、その進行の先にあるのが、毛根が再生不能になる「手遅れ」という状態です。「まだ大丈夫だろう」「そのうち考えよう」という安易な放置や先延ばしが、なぜ取り返しのつかない結果を招いてしまうのか、そのメカニズムを理解しておく必要があります。私たちの髪は、成長期→退行期→休止期というヘアサイクルを繰り返しています。AGAが発症すると、男性ホルモン由来のDHTが毛根に作用し、このヘアサイクル、特に髪が太く長く成長する「成長期」を著しく短縮させます。通常2~6年あるはずの成長期が、数ヶ月~1年にまで短くなってしまうのです。この異常なサイクルが繰り返されるとどうなるでしょうか。髪は十分に成長する間もなく抜け落ち、新しく生えてくる髪もまた、すぐに抜けてしまいます。まるで、まだ青い未熟な果実が、熟す前に次々と木から落ちてしまうようなものです。この「ミニチュア化」と呼ばれる現象が続くと、髪を作り出す毛母細胞は、本来の役目を果たせないまま、徐々に疲弊し、その活力を失っていきます。そして、ついに髪の毛を作り出すエネルギーが枯渇し、細胞としての寿命を迎えてしまうのです。これが毛根の死滅、すなわち線維化です。一度死んでしまった毛根は、二度と髪を生やすことはありません。AGAの放置は、この毛根の死滅というゴールに向かって、確実に時を進める行為に他なりません。あなたが悩んでいる間にも、あなたの毛根は一つ、また一つと、その命の灯火を静かに消しているかもしれないのです。だからこそ、AGAは時間との勝負であり、早期発見・早期治療が何よりも重要になるのです。
なぜAGAの放置は「手遅れ」を招くのか