鈴木さん(仮名・38歳)が自身の頭頂部の変化に気づいたのは、30代半ばのことだった。合わせ鏡で見たつむじ周りの地肌は、明らかに以前より目立っていた。以来、彼の自信は髪と共に失われていった。様々な育も虚しく、状況は悪化の一途を辿る。そんな彼が最後の望みを託したのが、自己の多血小板血漿(PRP)を用いた毛髪再生療法だった。カウンセリングで医師から詳しい説明を受け、自身の血液から抽出した成分で毛根の活性化を促すという仕組みに納得。治療への不安よりも、変われるかもしれないという期待が上回った。治療は数回にわたって行われた。頭皮への注入にはわずかな痛みを伴ったが、耐えられないほどではない。施術後、すぐに劇的な変化が現れるわけではなかった。最初の数ヶ月は、本当に効果があるのかと疑心暗鬼になる日もあったという。しかし、医師の「細胞が活性化するには時間が必要です」という言葉を信じ、治療を続けた。変化の兆しが見え始めたのは、治療開始から約半年が経過した頃だ。洗髪時の抜け毛が明らかに減り、髪をかき上げた時の指先に、以前にはなかった抵抗を感じるようになった。そして治療開始から一年後、彼は再び合わせ鏡の前に立った。そこに映っていたのは、地肌の透け感が大幅に改善され、一本一本が力強さを取り戻した頭髪だった。以前の写真と見比べると、その差は歴然。鈴木さんは言う。「髪が増えたこと以上に、気持ちが前向きになれたのが一番の収穫です。人の目を気にせず、堂々と顔を上げて歩ける。失っていたのは髪だけでなく、自信そのものだったのだと気づかされました」。これは、毛髪再生医療が一人の男性の人生に確かな光を取り戻した、一つの実例である。