AGA治療における初期脱毛、特にその症状がひどい場合、患者様が抱える不安は計り知れないものがあります。我々医師は、この現象が治療効果の表れであることを繰り返し説明しますが、日々抜け落ちていく髪を目の当たりにするご本人にとっては、それを冷静に受け止めるのが難しいことも十分に理解しています。そこで本日は、専門医の立場から、ひどい初期脱毛との正しい向き合い方についてお話ししたいと思います。まず最も大切なことは、自己判断で治療を中断しないことです。初期脱毛は、治療開始後2週間から1ヶ月ほどで始まり、通常は3ヶ月程度で落ち着きます。この時期に「合わない」「悪化した」と判断して服用をやめてしまうと、せっかく正常化しかけたヘアサイクルが再び乱れ、治療は振り出しに戻ってしまいます。これは非常にもったいないことです。次に、不安な気持ちを一人で抱え込まないでください。抜け毛の量が想定以上であったり、精神的に耐え難いと感じたりした場合は、遠慮なく処方を受けたクリニックにご相談ください。我々は、それが正常な範囲の初期脱毛なのか、あるいは別の要因が考えられるのかを診断します。そして、ほとんどの場合は正常な経過であることをご説明し、患者様の不安を和らげることができます。精神的なサポートも我々の重要な役割の一つです。また、この時期を乗り切るための物理的な工夫も有効です。全体的に髪を短くカットすると、薄い部分が目立ちにくくなりますし、外出時には帽子をうまく活用するのも良いでしょう。ひどい初期脱毛は、いわば“好転反応”です。暗く長いトンネルのように感じるかもしれませんが、その先には必ず出口があります。我々医師を信頼し、二人三脚でこの大切な時期を乗り越えていきましょう。