「髪育注射」と一括りに言っても、その中には、注入する成分や、その生成方法によって、いくつかの異なる種類が存在します。現在、日本のクリニックで主に行われている、代表的な二つの治療法、「HARG(ハーグ)療法」と「PRP(多血小板血漿)療法」について、その違いを解説します。まず、「HARG療法」は、人間の脂肪幹細胞から抽出した、150種類以上もの、精製された「成長因子(グロースファクター)」を主成分とする、HARGカクテルを頭皮に注入する治療法です。このHARGカクテルには、毛母細胞の増殖を促すKGF(毛母細胞成長因子)や、血管を新生し血流を改善するVEGF(血管内皮細胞増殖因子)といった、発毛に直接関わる、様々な成長因子が、高濃度で含まれています。これに加えて、ビタミンやアミノ酸なども配合されており、発毛のための、いわば「栄養のフルコース」を、頭皮に直接届けるような治療法です。日本医療毛髪再生研究会によって、そのプロトコルが厳格に管理されており、認定された医療機関でしか、施術を受けることができません。次に、「PRP療法」は、より自分自身の治癒力を活用した、再生医療に近いアプローチです。この治療法では、まず、患者自身の血液を採取します。そして、その血液を遠心分離機にかけ、血小板を、通常の血液の何倍もの濃度にまで濃縮した成分、「PRP(多血小板血漿)」を抽出します。このPRPを、頭皮に注入するのです。血小板には、組織の修復や再生を促す、豊富な成長因子が、自然な形で含まれています。自分自身の血液成分を用いるため、アレルギー反応や、拒絶反応のリスクが、極めて低いというのが、最大のメリットです。どちらの治療法も、弱ってしまった毛根を、成長因子の力で活性化させる、という基本的なメカニズムは共通しています。
髪育注射の種類、HARG療法とPRP療法