AGA治療の効果の限界?フサフサに戻るは幻想か
「AGA治療を始めれば、昔のようにフサフサの髪に戻れるはずだ」。大きな期待を胸に治療を開始する方は多いですが、ここで一つ、知っておかなければならない現実があります。それは、AGA治療薬の効果には限界があるということです。特に、薄毛がかなり進行して「手遅れかもしれない」と感じている方が治療を始める場合、そのゴール設定は非常に重要になります。AGA治療薬、特にフィナステリドやミノキシジルは、魔法の薬ではありません。これらの薬の基本的な役割は、ヘアサイクルの乱れを正常化し、抜け毛を減らすこと、そしてまだ生きている毛根を活性化させ、細くなった髪を太く、強く育てることです。つまり、治療の土台となるのは、あくまで「現存する毛根」なのです。完全に毛根が死滅し、毛穴が閉じてしまった場所に、何もないところから新しい毛根を生み出すことは、現在の医学では不可能です。したがって、治療によって期待できる効果は、「失われた髪を完全に取り戻す」ことではなく、「残っている髪のポテンシャルを最大限に引き出し、全体的なボリューム感を改善する」こと、そして「これ以上の進行を食い止める」ことにあるのです。例えば、100本あった髪が30本にまで減ってしまった人が治療を始めた場合、30本の毛が太く長く成長し、休止期だった毛根から新たに10本が生えて、合計40本分のボリューム感になる、といったイメージです。決して100本に戻るわけではありません。この現実を理解せずに治療を始めると、「思ったほど生えない」と失望し、治療を中断してしまうことにも繋がりかねません。手遅れに近い状態からの治療は、失われたものを取り戻すのではなく、残されたものを守り育てる戦いです。その価値を理解することが、治療を成功に導く鍵となります。